それはある晴れた日の事だった。

「八戒もう一回!!」

「本当には負けず嫌いですよね?」

「つーかチャン・・・悟空並に弱すぎ。」

「次こそは勝つもん!さ、配って配って!!」

いつものようにお昼ご飯を食べて皆でのんびりお茶をしながらトランプをしている時にこの話の事件は舞い込んできた。

「こんちわー!」

バターンと言う軽快な音が聞こえた後、飛び込んできた小さな影。

「おい、ジープを貸せ!」

その後を追うようにやってきたもう一つの人影は挨拶も無い。
まぁそれもいつもの事だけど・・・。

「あ、三蔵と悟空だ。いらっしゃ〜い♪」

、来てたんだ!!」

勢い良く飛びついてくる悟空の体を受け止めギュッと抱きしめる。
相変らず可愛いなぁ。

「で?何の用だよ。」

「いてててっ」

「悟浄!!」

悟浄が悟空の頭に拳骨を押し当ててる。
うわぁゴリゴリ言ってて痛そうっ。

「おい八戒、ジープを貸せ。」

「一体どうしたんですか三蔵?」

あたしにしがみ付いている悟空を剥がそうとする悟浄、苦笑しながらその二人の仲裁をしようと苦労するあたしを余所に三蔵と八戒の二人は会話を進めていた。





「・・・まぁそう言う事でしたらご一緒しますが。今からですか?」

「そうだ、明日迄にそこへ行けと三仏神が言いやがった。」

「それじゃぁ今から行かないと間に合いませんね。支度してきます。」

「あぁ」

悟空が悟浄によってあたしから剥がされてから、あたしは安全地帯でのんびり二人の様子を傍観していた。
さすがにそこへ割ってはいる勇気は無い、だって体力勝負だし。
ふと八戒に視線を移すと空のカバンに物を詰めている姿が見えた。

「あれ八戒お出掛け?」

「えぇちょっと・・・」

「手伝おうか?」

「大丈夫ですよ、大したものは持って行きませんから。」

それから僅か5分であたしの状況はガラリと変わってしまった。










「・・・と言う訳ですので三蔵をこの先のお寺まで送ってきます。」

「はーい。」

悟浄の家の前では車に姿を変えたジープ。
そして運転席に八戒、助手席に三蔵、後部座席に悟空を乗せて出発の準備を済ませていた。

「3日程で帰ります。冷蔵庫の中はいつものように自由に使ってください。」

「うん、気にしないで適当にやってるから。」

「オレが一緒だから退屈なんてさせねーよ♪」

そう、気になったのは悟浄。
隣に立ってニヤニヤ笑いながらあたしの肩に手を回してジープに乗ってる皆に楽しそうに手を振ってるんだけど・・・

悟浄は・・・行かないの?



「・・・お前も来い。」

「あ゛?」

「悟浄も来るんですよ。」

「あんでよ!?」

「早く乗れよ、このエロガッパ!!」

「何でテメェに河童呼ばわりされなきゃ何ねーンだ?あぁ?」

あぁまた始まった・・・長くなるんだろうなと思った悟浄と悟空の言い争いは三蔵の銃音ですぐに収まった。

「てめぇ一人の側に置いていくわけねぇだろう。」

「ウサギさんの前に狼を置いていくような危険な真似は出来ません。さ、悟浄早く乗ってください。」

「マジ?」

悟浄がそれでもジープの乗るのを渋っていると・・・氷の微笑がこちらを向いた。

「・・・それとも歩きますか?」

「乗りま〜す!悟浄、車大好きv」

せかせかと悟空の隣に座ると引き攣る笑顔を運転席に向けた。

「と言う訳でを一人にしてしまいますが・・・」

「気にしないで、適当に過ごしたらあっちに帰るから・・・」

一瞬前の冷たい笑みはどこへやら・・・いつもと同じ暖かい笑顔がすまなそうにあたしを見た。
続きの言葉は身を乗り出してあたしに話しかける悟空の声で消されてしまった。

「今度来たらまた一緒に遊ぼうな♪」

「うん楽しみにしてる。気をつけてね、悟空。」

笑顔で頷こうとした悟空をシートへ押しつぶして、その上に体重を掛けた悟浄がやけに真面目な顔で話しかけてきた。

チャンすぐ帰ってくっから男なんか連れ込むなよ?」

「そんな人いないってば、いってらっしゃい悟浄。」

あたしが話している途中で悟浄の頭にハリセンが振り下ろされた。
思わず吹き出したあたしの耳に三蔵の声が聞こえる。

「すぐ戻る。」

「気をつけて行ってらっしゃい、三蔵。」

「・・・あぁ」

言葉は少ないけど心配してくれてるのがわかる。
思わず自然と笑顔になり、最後に運転席に座っていた八戒が一旦エンジンを切ってこちらを見た。

「後片付けは気にしないでいいですから置いておいて下さい。戸締りには十分気をつけて・・・なるべく早く戻りますから・・・」

あぁぁ物凄く心配してる。
まぁそうだよね、一人でこの家にいる事って今までに無いし、以前八戒と悟浄が買い物でいなかった時泣いちゃったからなぁ。

でもあの時と今じゃだいぶ変わってるから・・・。

あたしは八戒の心配を少しでも取り除けるよう出来る限り笑顔で見送りをする事にした。

「それぐらい片付けておくよ、家の方は気にしないでいいからお仕事頑張ってね八戒。」

「ありがとうございます。それでは行ってきます。」

「ジープも行ってらっしゃいv」

「キュキュ〜♪」

ボンネットをポンポンと叩くとライトがチカチカ点滅して、ジープのいつもの可愛らしい声がそこから聞こえた。

「それじゃぁ行ってきます。」

「イイ子で待ってろよ?」

またな〜!!」

「・・・行ってくる。」

「行ってらっしゃ〜い!!」

それぞれが挨拶の言葉を言いながらジープは発進して行った。
姿が見えなくなるまで手を振っていたその影の形から、悟空が立ち上がって手を振ってくれているのが見えたのであたしもジャンプをしながら両手をぶんぶん振った。
姿が見えなくなって少し寂しい気持ちになろうとした時、車の進んで行った方向から一発の銃声と悲鳴らしきものが聞こえてきて思わず笑った。

「悟空と悟浄・・・かな?」

どこへ行っても変わらない、四人での旅はこれが最初なのかなぁと思いながら家に入り、八戒に言われたとおりキチンと戸締りをしてさっきまで悟浄達と遊んでいたトランプを片付け、使っていたカップ類をキチンと洗って棚にしまうと、小さなため息をついて部屋を見渡した。

「・・・一人だとやっぱり寂しいな。」

いつもは狭く感じるこの居間も、今では広すぎるくらい。

「あー・・・こーゆーのダメだ〜」

急に胸にこみ上げてくるものがあって目が潤み始めた。
誰もいないなんて事、今まで無かったから・・・やっぱり寂しいもんだなぁ。

「こーゆー時は・・・寝る!」

あたしはソファーに置いてあったクッションを胸に抱いて、出掛けて行った4人の無事を祈りながら瞳を閉じた。





それにしても・・・結局何しに行ったんだろう、皆。





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うたた寝初の連載スタートです!
今はまだ普通で、どちらかと言うと三蔵達を巻き込んだいつもの日常って所でしょうか?
これからどうなるのか・・・その先は私しか知りません(笑)←当たり前!
取り敢えず「次はどうなるの!?」と言う風に突っ込んでもらえるように毎回話を切ってます(おい)
しかもそれを倍増させるようにうたた寝トップに次回予告をちまっと置いてみたりして(笑)
それがちゃんと予告になってるのかどうかは別・・・(苦笑)

ドキドキしながら1週間を過ごして待っていて下さいv
・・・と、期待して貰える物を書いていけるよう頑張りますので全16話(多分)お付き合いください!