「ん〜・・・」

「起きろよ・・・」

いつも呼んでくれる優しい声。

「あ!悟浄何しようとしてんだよ!」

「たまにはイーじゃんv」

ん〜・・・この声は・・・悟浄と・・・悟空?

「早く起きねェと・・・イタズラしちゃうゼ?」

「止めろって、この赤ゴキ河童!」

「あぁ?チャンの前にテメェで試してやろうか、こっの脳みそ胃袋ザル!!」

一体何の話してるの?まだあたし眠いんだけど・・・。
その声から逃れるように体を反転させると何故か暖かなものが頬に触れた。

「おっ?悟空のヤツ、いっちょ前に照れてやがる♪」

「そっそんな事・・・あっ!悟浄止めろって!!」

ん?何かが頬に当たって・・・



キュゥ〜 キュッ キュッ



「ハイ完成v」

「ダメですよ悟浄、にヘンな事しないで下さい。」

くすくす笑う八戒の声が聞こえてあたしはようやく目を開けた。

「お、はよう。」

「おはよう・・・あれ?悟空?」

目を開けると何故かすぐ側に悟空の顔があって、体は完全に悟空の肩に寄りかかっていた。
慌てて起き上がって周りを見るといつもと景色が全然違う・・・って言うか寝てる場所がベッドじゃなくてジープの上!?

「悟浄!八戒!此処何処!?」

「その前に、一緒にそこまで行きましょうか?洗顔するでしょ?」

「え?あ、うん・・・するけど・・・」

「それもに似合っているといえば似合ってるんですが・・・」

珍しく八戒は苦笑したままカバンの中から小さな鏡を取り出してあたしに渡してくれた。
てっきりヨダレの痕でも残ってるのかと思ってこっそり鏡を覗いて・・・思わず声を無くした。

「!?」

「あー楽しかった♪」

「結構あれ落とすの大変なんだぞ!俺さっきまでかかったんだからな!!」

「まぁ油性じゃなかったのがせめてもの救いですよね。」

「な、な、何これぇ!?」

今いる場所が何処だとか、目が覚めた時悟空の肩枕だったとか・・・それも驚きだけど、今あたしの一番の驚きは・・・頬に書かれた猫のような・・・ヒゲ?
ご丁寧に左右の頬に3本ずつ書かれている。
手の平でゴシゴシ擦ると少し薄れた事から、多分水性ペンだと思われる。

「ダメですよ、無理に擦っちゃ・・・タオル濡らしてありますからこれで拭いてください。」

「八戒どうして止めてくれなかったのぉ〜」

渡されたタオルでゴシゴシ両頬を擦ると、書いたばかりと言う事もあってあたしの顔に突如生えた猫のヒゲは僅か1分でない物となった。

「いや〜・・・猫ヒゲのあるも可愛いだろうなぁと思いまして。」

「・・・八戒ぃ。」

にっこり笑顔でそう言われたらもう何も言えないよ。
でも取り敢えずやられた事の仕返しはキチンとしておかなきゃね。

「はい、どうぞ。」

「え?」

そう言って八戒があたしに手渡したのは黒いマジック。
あたし・・・今、口にした?まずマジックを手に入れて・・・とか何処かにマジックないかな・・・とか。
取り敢えずそれを受け取って眺めたが油性か水性かは文字が読めないので分からない。
チラリと八戒の方を見るとにっこり笑ってあたしの肩を叩いた。

「大丈夫ですよ?2、3日もすれば落ちますから。」



・・・油性だ。



確信犯的な笑顔の八戒と手を取って乙女の顔に猫ヒゲを書かれた報復を果たすべく、今だジープに乗っている悟浄の元へ二人で急ぐ。移動の間に黒マジックはあたしの手から八戒の手に渡された。
そんな企みも知らず悟浄は先程と同じく悟空と他愛無い言い争いを続けていた。
八戒に負けないような笑みを浮かべながら指で悟浄の肩をとんとんと叩く。





「ご・じょ・おv」

「あ?」

振り向いた瞬間、悟浄の腕をがしっと掴み隣にいた悟空にも助けを求める。

「悟空、そっちの手押さえて!」

「え?あっうん!」

「ちょっチャン!?サル!テメェまで何してんだ!!」

「さて、どんな言葉がいいですかね?」

「八戒?!お前っ何、手に持ってる!!」

悟浄はあたしが掴んでいる右手側はあまり抵抗していないが、悟空の押さえている左側はこれでもかと言うくらい暴れている。一応あたし手加減してもらってるのね。

「おや?悟浄にはこれがブラシか何かに見えますか?」

「マジックってのは見りゃ分かる!それで何しようとしてるか聞いてンだ!」

八戒はやれやれと言った風にため息をついてマジックのフタを取ると、悟浄の前髪を掻き揚げ小さく呟いた。

「因果応報って言葉の意味、知ってますか?」

「おいっ!・・・チャン、悟空! 八戒! 
 八戒さん!   八戒サマ!!















「あ、三蔵お帰りなさい。ご用事終わったの?」

「・・・いや、これからだ。どうも面倒な事に・・・ってお前ら何笑ってやがる。」

「えっ?そんな事・・・ない・・・よ・・・」

言いながらどうしても頬が引き攣って笑いが堪えられない。
悟空はさっきからお腹を抱えて地面を転がりながら右往左往している。
誰だってあれ見たらこうなるよねぇ・・・。

「いや〜思ったより似合っているのでどうしたものかと・・・」

ただ一人、いつもと同じ状態の八戒。
まぁこの状態を作ったのも八戒だけどね。

「あぁ?」

不審に思った三蔵が一生懸命タオルで顔を擦っている悟浄を見つけ、面倒臭そうに名前を呼んだ。
あ、呼んじゃった。

「おい、そんな所で何してる。」

「うっせェなオレの勝手だろ!」

「話がある、こっちに来い!」

「オレはねェよ!」

一向に来る様子が無い悟浄に向けて三蔵の銃の照準がその後頭部に向けられた。

「じゃぁ死ね。」

「それが坊主の台詞かよ!!」

そう言って反射的に振り向いた悟浄の顔を見た三蔵は、これまでに無いほど楽しそうに口元を緩ませるとあたしの方を振り向いてポンポンと頭を撫でた。

「上手に書けてるじゃねぇか。」

「そういう問題かよ!!」

「名前書いたのはあたしだけど、それ以外は八戒だよ。」

「素直に書かせてくれないので苦労しましたよ。」

「書かせるわけねェだろぉが!!」



そう、あたしに水性ペンで猫ヒゲを書いた悟浄は、その報復として油性ペンであちこちにラクガキされてしまったのだ・・・って言うかしたのはあたしと八戒だけど。
取り敢えず悟浄の右腕にあたしの名前、左腕に悟浄の名前。
そして悟浄の額には八戒からの暖かいお言葉が・・・。



『僕はもう二度と悪戯をしません』



まぁ分かりやすく言うとそう言う事。
書いてある文字は漢字だから良く分からないけど、意味を聞いたらそういう事だと言われて思わず笑った。

「そこの馬鹿はほっといて・・・、これを着ろ。今着ている物の上からでいい。」

三蔵はそう言うとあたしに大きなゆったりとした服を投げて渡した。
それは着物のような浴衣のようなっ・・・てどっちも着物か。

「三蔵?」

「もう一度寺へ戻る。今度はお前らも・・・な。」





こうしてあたしの新たな一日は始まった。
ちなみに悟浄の両腕に書いてある字はタオルで擦りまくったおかげで何とか薄くなったけど、真っ赤になった腕だけが後には残ってる。自分で書いといて何だけど・・・ちょっと痛そう。
額に書かれた文字は取り敢えず手持ちのバンダナを巻いて隠す事にしたみたい。





BACK          TOP          NEXT



連載第二回!・・・の筈なんだけど、全く関係ない話になってる(汗)
取り敢えず三蔵が先に一人で目的地であるお寺に行ってる間、待ってる人達の話を・・・と考えていたらこんな事に(爆笑)
いや〜私ってつくづく彼らのこーゆー空気が好きみたいです♪
ごめんね悟浄、いつもオチに使っちゃってv
楽しかったけど次からは少し真面目になるのかな?
(でも書くのが私だから無理とも言う!)