「あっ!オカエ・・・」
「おい悟空!昨日の坊主がここに来なかったか!」
「誰か他に来たヤツはいねェのか!悟空!!」
「うえぇ!?」
帰ってきた早々部屋に飛び込み、お帰りの挨拶を言う間もなく二人に囲まれた悟空は目を白黒させている。
「二人とも少し落ち着いてください。」
「コレが落ちついていられるかってーんだ!」
「何だってんだよ!悟浄!!」
悟浄は悟空の肩を揺さぶっている
「少し静かにしてくれませんか?がそこで休んでるんですから・・・」
「あ・・・ハイ。」
「ご、ごめん。」
にっこり笑って3人を見ると、なぜか全員が僕から視線を反らしている。
おかしいですね・・・僕、何か変な事したでしょうか?
「さて悟空、僕らがいない間に誰か訪ねてきませんでしたか?」
視線を泳がせていた悟空が急に名前を呼ばれた事に驚いて、勢い良く僕の方を見た。
「う、ううん!誰も来なかった!!来たのは昼飯運んできた人だけ。」
「って事は?」
「寺院内の人間に聞くしかねぇって事か・・・」
三蔵がため息をついて立ち上がると扉に手を掛けた。
「八戒、お前も来い。」
「僕もですか?」
「俺一人に任せようなんざ考えてんじゃねぇぞ。」
「・・・分かりました。それじゃぁちょっと行ってきます。」
そう言って三蔵の後を追おうとしていた僕の肩を悟浄に掴まれた。
「おいおい休まなくて良いのかよ?」
「八戒昨日も寝てないじゃん!俺、代わりに行こうか?」
すぐ側には心配顔の悟空。
確かにがあんな事になってからろくな食事も睡眠も取れていませんが・・・に比べればなんて事ありません。
でも悟空に気付かれる程、顔に出てしまっているんでしょうか?
「大丈夫ですよ。こう見えて案外丈夫に出来てますから・・・三蔵、行きましょうか。」
「・・・あぁ。」
今だ心配そうにこちらを見ている二人に扉の隙間からにっこり笑って手を振ると、静かにその扉を閉めた。
暫く寺院内を歩くと、正面から一人のお坊さんが歩いてきた。
「おい、お前。」
「さ、三蔵法師様っ!!な、何か御用でしょうかっ!!」
「ここひと月の間にこの寺に預けられた品の目録が見たい。何処にある。」
「そ、それでしたらこちらに・・・」
見るからに緊張した面持ちで、歩く足取りは微妙に震えている。
しかしその表情は三蔵に声を掛けられ、そのお役に立てていると言う満足感で頬が高潮しているようにも見えた。
「此方でございます。」
案内された部屋は書物等が綺麗に並べられているいわゆる書物庫のような場所だった。
キチンと年代ごとに仕分けされており、こう言っては失礼ですがこんな小さなお寺にしては色々と相談事が持ち込まれているようですね。
「ひと月前頃と言いますと・・・大体この辺になりますが。」
「ありがとうございます。こちらの机、お借りしますね。」
僕は側にあった小さな机の上に巻物を全て移動させ、上の方に積まれた物から丁寧に開いてその中に目を通し始めた。
「それでは・・・私はこれで・・・」
「おい、もう1つ頼みがある。」
「はい!何でしょう!!」
「あの姿見が持ち込まれた後、指輪を持ち込んだ老婆がいるはずだ。それを受け取った奴をここに連れて来い。」
「は?」
「大僧正にも聞いて来い。もし何か言いやがったら姿見の件で俺に直々に申し付けられたと言ってやれ。」
「すみませんがよろしくお願いいたします。」
僕も口調だけはいつもどおり丁寧だが、その目は巻物に書かれている品物をチェックする為離す事が出来ない。
彼は暫く戸惑っていたようだが、やがて元気な足音と共に気配が離れて行ったのが分かった。
「・・・どうだ?」
「ダメですね・・・宝飾品は結構あるんですが、値打ちのある金が多くて今の所銀の指輪はありません。」
「こっちはまだだな。」
「・・・はい。」
それから暫く二人で巻物を紐解いては片っ端から中身を調べると言う地道な作業を行った。
やがて僕の手がある一文で止まる。
「・・・三蔵、もしかしてこれじゃありませんか?」
「どれだ?」
「これです。」
僕が一冊の巻物を広げてある一点を指で指し示す。
「そう・・・だな。」
「『孫の嫁、荊藍への供養』とありますから・・・」
ようやく手がかりが掴めた事に安堵した僕らは、暗い部屋でずっと細かい字を見ていた疲れがドッと出たのかお互いため息をついた。
僕はモノクルを外して一息つくと、三蔵が僕の前にあった巻物に手を伸ばしてきた。
「それにしても八戒。」
「はい?」
「良くこの字が読めたな・・・お前。」
「・・・さすがに最初は戸惑いましたが、慣れですよ。」
「慣れで読めるものか?」
三蔵は感心したように僕が示した巻物の他の文字を眺めていた。
確かにこれを文字と言うのはちょっと文字に対して失礼かもしれないと言うぐらい達筆・・・ですからねぇ。
ようやく指輪の手がかりを見つけた。
あとはこれが何処に保管されているかを調べるのみ・・・
外を見ると太陽が徐々に傾いてきている。
時間はもうあまりない・・・
指輪が灯台下暗し、寺院にある事に気付いた一行は今度はお寺をあさってます。
ここはやはり三蔵法師様のご威光をフルに活躍してもらいましょう!
って事で、調べものならこの二人でしょう♪
普通よりちょっと大きめの寺院なので、相談事とかはちょこちょこ持ち込まれてるみたいですね。
二人が部屋にこもって書物を読んでる姿って、意外と違和感無く想像つきます(私は)
さて二人が掴んだ指輪の手がかりは一体!?って所で、次回へ続く!!