「で、取り敢えず町には着いたけど、これ・・・町か?」
「どちらかと言うと、村・・・と言った方が正しい感じですね。」
三蔵に言われ荊藍(ケイラン)さんの家があるという町にジープで向かったんですが、いざ着いて見るとそこは僕らの住んでいる町とは違う小さな村だった。
「こんだけちっこいんだったらすぐ見つかんじゃねェの?」
「そうだといいんですが・・・」
なぜか嫌な予感がする。
そんな楽観視していてもいいものだろうか・・・と。
僕が考え事をしている間に、悟浄が目の前を歩いていた女性に声を掛け何か楽しそうに話をしている。
相変らず素早いですね。
「ふ〜ん・・・家事手伝い、そんじゃ滅多に外とか出ないんだ。」
「えっ・・・えぇ」
女性の方もまんざらではない様子で、はにかみながらも悟浄と他愛無い話を続けている。
しかし5分・・・10分が過ぎても談笑している姿を見ていると、本来の目的を忘れてしまっているのではと思い始めた。
「・・・しかたありませんね。」
今まで黙って様子を伺っていたんですが、悟浄に声を掛けようと一歩足を踏み出した瞬間状況が一転した。
「し!知らない!!知らないわっ・・・サヨウナラ!」
「おっ・・・おい!待てよ!!」
悟浄が今まで楽しく話をしていたはずの女性は顔色を変えて走り去ってしまった。
僕はボーゼンと立ち尽くす悟浄の側にそっと近づく。
「なんだってンだ、チクショウ!」
「また貴方が何か変な事言ったんじゃないですか?」
「何も言ってねェよ!」
噛み付くように僕の方を振り向いた悟浄の顔に嘘は見られない。
「どんな話をしていたんですか?」
「いや・・・その・・・普通にナンパ・・・じゃなくて、あの子の好きなモンとか好みの男の話とか家の話とか聞いて・・・」
「随分横道にそれていたんですね。」
「突っ込んだ話すンなら少しは親しくなんねェと喋ってくんねェだろ!?」
「それで?」
十分別の意図も汲み取れるが今はそんな事に構っている暇は無い。
引き続き悟浄の話を聞く。
「で、明日のデートの約束取り付けた後『李家の荊藍』って知ってるかって言ったら・・・」
「逃げられた・・・と?」
「そ、な?オレ別に変な事言ってねェだろ?」
「・・・嫌な予感が当たってしまったかも知れませんね。」
「はぁ?」
僕は自分の中の疑惑を確信させる為、手近にある店に入り店主に声を掛けた。
「いらっしゃい、何をお探しで?」
「いえ、ちょっとお尋ねした事がありまして・・・お伺いしても宜しいですか?」
僕はいつも地元で買い物をする時と同じようににっこり微笑みながら店主に尋ねると、相手も笑顔で頷いてくれた。
「あぁ、俺が知ってる事だといいんだが・・・何だ?」
「李家の荊藍さんについてお伺いしたいんですが、ご実家がどちらにあるかご存知ですか?」
「りっ・・・李家!?」
やはり先程悟浄が話をしていた女性と同じような反応。
「悪いが知らん・・・帰ってくれ!」
「何か話せない事情がおありなんですか?」
「いや、知らん!帰ってくれ!!」
それだけ言うと店主は何も言わず店の奥に入って行ってしまった。
僕は小さな声で礼を言うと、外で待っている悟浄の元へ戻った。
「・・・で、結局どういうコト?」
「分かりません。ただこの小さな村で『李家』を探すのは案外難しいかもしれないという事だけは確かですね。」
「確かですねって・・・そんな悠長な事言ってらんねェだろ!!」
「勿論です・・・取り敢えず手分けして『李家』について調べましょう。一時間後にこの場所に戻ってきて下さい。」
「おうっ!」
勢い良く走り出す悟浄の背に一応釘を刺しておく。
「悟浄!暴力に訴えないで下さいよ!!」
「・・・了解。」
少し間があった事から頭の中にその手段があったのだという事が伺える。
そしてその言葉は自分に対しても言い聞かせるべき事だった。
「・・・案外押さえが利かないものですね。」
自嘲気味に笑ってから僕は悟浄の行った方向とは反対の方向へ歩いて行った。
いつも隣で笑っていた人がいないだけで
出会う前は知りもしなかった人なのに・・・
その人の為に一生懸命になれる自分が少し・・・
うっわぁ〜っ!短い短い短いぃ〜!!しかも名前変換無しかよ(苦笑)
とは言えどうしてもこの後を考えると、ここで区切るしかしょうがなくて・・・。
本当はもう少し文章を長くしようとも思ったんですが、長くするとこう・・・テンポが悪くなりそうだったので止めちゃいました。
ここでは「李家」を探すのが楽そう・・・と思っている二人が意外と苦労すると言う事と、何だか知らないけど「李家」は村人たちの間では禁句になってると言う事が言いたかっただけです。えぇただそれだけで1話分使っちゃったんです(苦笑)
そしてラストの八戒・・・自分でもわかりませんが、意味深な台詞。
キャラが一人歩きして喋り出した台詞には、突っ込みのいれようが無いですね。
何かに対して一生懸命になる熱い想いが自分の中に沸いてきている事に対しての気持ちと言うのは分かるんですが・・・。